エアコンは自分で取り付けできる!?作業手順と費用は?

「エアコンを自分で取り付けたい」と考える方は少なくありません。しかし、エアコンの設置には専門的な知識や専用工具が必要なため、未経験の初心者が一からチャレンジするのは容易ではありません。とはいえ、正しい知識と手順を身につければ、DIYで設置することも不可能ではありません。本記事では、自分でエアコンを取り付けるために必要な条件や工具、部材、手順、注意点、そしてかかる費用についてまとめて解説します。仕事として取り組みたい方も含め、これからエアコンを自分で設置しようと考えている方はぜひご一読ください。

「自分で取り付けられる場合」と「できない場合」を確認

自分でエアコンの取り付けが可能なケース

電気工事が不要な場合

  1. 以前からエアコンが設置されており、専用コンセントもそのまま使える。
  2. コンセントの交換や電圧切り替えが一切不要。
もし新設コンセントを取り付けたり、電圧を200Vから100Vに切り替えたりする必要がある場合は、電気工事士の資格が必須です。資格なしに手を加えると、感電や漏電を引き起こす危険があるため、必ずプロに任せましょう。

配管用の穴が開いている場合

エアコンを壁に設置するには室内機と室外機をつなぐ配管を通す穴が必要です。すでに配管穴が空いていれば、壁にドリルで穴を開ける手間を省けます。

※自分で穴を開けるときは、壁の内部にある柱や梁、配線などを傷つけるリスクがあるため、構造に詳しくない方がDIYで開けるのは推奨できません。

室外機をベランダや地面に置ける場合

室外機を屋根や壁面など特殊な場所に設置しないのであれば、DIYでも取り付けは可能です。一般的な家庭用エアコンの室外機は30~50kgほどあり、特殊なクレーンや高所作業が必要な場合はプロの技術が求められます。
ベランダや駐車スペースなど床置き・地置きができる環境であれば、比較的リスクは抑えられます。

2人以上で作業できる場合

室内機(約10kg)と室外機(約30~50kg)を運んで、壁面に据え付けるには人手が必要です。一人では重さと取り扱いの難しさからケガや落下事故につながりやすいため、かならず2名以上で作業を行い、安全を確保しましょう。

自分で取り付けられないケース

電気工事が必要な場合

  1. ・専用コンセントの新設・移設や、単相100V⇔単相200Vの切り替えなどは、電気工事士の資格が必要です。
  2. アース線の接地作業、内部配線の接続、防護装置の取り付けなども同様に資格が必須。
無資格で電線を扱うと漏電や感電事故を引き起こし、建物や人体に大きなダメージを与える恐れがあるため、必ず資格保有者に依頼してください。

壁内に配管を隠したい(隠蔽配管)場合

見た目をすっきりさせたいという理由で、壁や天井裏を通して配管を隠す「隠蔽配管」を希望するときは、壁に大きな穴を開けて配管を埋め込む高度な工事が必要です。DIYの範疇を超えた技術と施工経験が求められるため、一般の方が自分で行うのは困難です。

室内機と室外機の設置場所が大きく離れている場合

室内機と室外機の間が長距離になると、配管や配線を延長する必要があります。配線延長は電気工事士の資格がないと行えませんし、長い配管を適切に施工するには専門知識と経験が求められます。無資格かつ未経験で手をつけるのは非常に危険です。

エアコンを自分で取り付ける際に必要な道具

エアコン設置にはさまざまな工具が必要です。すべてを揃えるとコストが嵩むため、使用頻度の低いものはレンタルを活用すると効率的です。以下に「購入しておくとよい工具」と「レンタルがおすすめの工具」に分けてご紹介します。

購入しておくとよい工具

工具名 用途
ドライバー ネジ締め
ニッパー・ペンチ 電線ケーブルの被覆むき
両口スパナ 冷媒配管の接続
モンキーレンチ フレアナットの締め付け
六角棒レンチ 室外機側のサービスポート開閉
パイプベンダー 銅配管パイプの折り曲げ
ガス漏れ検知器 ガス漏れの確認
水平器 壁への据付板取り付け時の水平確認

※目安費用:約10,000円前後

レンタルがおすすめの工具

工具名 用途
トルクレンチ 冷媒配管接続時の締め付けトルク管理
電気ドリル 据付板の固定用穴あけ
コアドリル 配管穴を開ける(壁の材質に応じたドリルビット)
エアコンダクトカッター 化粧カバーや配管用ダクトの切断
フレアツール 冷媒銅管のフレア加工(ラッパ状に広げる加工)
真空ポンプ 配管内部の真空引き(配管内の空気・水分除去)
真空ゲージ 真空状態の確認(ポンプ性能のチェック)
パイプカッター 銅管の切断
リーマー 銅管切断時のバリ取り

※使用頻度が低く高価なもの

レンタルしたい場合は「エアコン取り付け 工具 レンタル」などで検索し、必要な工具を一式揃えてくれる業者を利用すると手間が省けます。

購入が必要な取り付け部材

道具だけではエアコンを設置できません。以下に挙げる部材を揃えておく必要があります。目安費用は10,000円~20,000円程度ですが、これも既に手持ちがあるものを活用すれば費用は抑えられます。

部材名 用途
プラブロック 室外機を地面やベランダに安定して設置する
ボードアンカー 据付板をコンクリートや石膏ボードに固定する
銅配管(冷媒配管) 室内機と室外機をつなぐ冷媒の配管
配管テープ 配管とドレンホースをまとめる、化粧カバー代わり
ドレンホース ドレン水(結露水)を室外へ排水するため
貫通スリーブ 開けた配管穴まわりの保護
渡り配線用VVFケーブル 室内機と室外機の電源・信号線接続
エアコン配管用パテ 壁の配管穴まわりの隙間埋め
化粧カバー 配管やケーブルを見えないようにまとめる
アース棒/アース用ネジ/アース線 アース工事(必要に応じて電子工事士資格が必要)

エアコンを自分で取り付ける手順

以下は一般的な家庭用エアコン(壁掛けタイプ)を設置する際の一例です。取り付け環境によって作業内容は変わるため、必ず製品付属のマニュアルや施工説明書を確認しながら進めてください。

1. 取り付ける位置を決め、養生する

取り付け位置のチェックポイント

  1. 壁に配管用の穴があるか
  2. 室外機を置けるスペース(ベランダや地面)があるか
  3. エアコン用専用コンセントの有無および位置が適切か
  4. コンセントの電圧が本体に合っているか

養生

工具や部品を置く床や壁をキズや汚れから守るため、やわらかい布や養生シートで保護します。
※もしコンセントの新設や電圧切り替えが必要であれば、必ず電気工事士の資格を持つ方に作業を依頼してください。

2. 壁に穴を開ける

既存の穴がない場合

  1. 壁内部に柱や梁、電線・ガス管・水道管などがないか図面や壁内センサーで確認
  2. 石膏ボードの表面(室内側)をコアドリルでくり抜き、中の断熱材を避けながら室外側まで掘り進める
  3. 排水を考慮して、室内側から室外側に向かってわずかに勾配をつける
  4. 穴が開いたら貫通スリーブを通し、配管の摩擦や壁材の損傷を防ぐ

※壁が土壁やコンクリートの場合は、適切なコアドリルやビットを使用し、割れや破損に注意しましょう。

3. 据付板を取り付ける

室内機をしっかり支える「据付板」を壁に固定します。

  1. 据付板は配管穴の右上または左上に設置
  2. 据付板に記載されている寸法どおり、中心位置に印をつける
  3. 水平器で水平を確認しながらビスを締める
  4. 壁材に合わせたボードアンカーやグリップアンカーを使用する(下表参照)
壁の材質 固定方法
石膏ボード カサ式ボードアンカーを使い、ビスで固定
土壁 縦桟(金属製の下地)を用意し、その上から据付板を金具で固定
しっくい 合板の下地をあらかじめ貼り、その上に据付板を固定
鉄筋コンクリート グリップアンカーまたはオールアンカーを打ち込み、ボルトでがっちり固定

据付板がしっかり固定されていないと、室内機が落下し重大事故につながる恐れがあるため、壁の材質に合った方法で必ず固定してください。

4. 室内機の準備をする

  1. 室内機のフロントパネル、端子台カバー、配線固定用パーツを外す
  2. アース端子台のネジを外し、アース線を引き出す
  3. アース線の被覆をむき、「メガネ」と呼ばれる輪っかを作って端子台に固定
    電線(VVFケーブル)の先端をニッパーでむき、同色線同士を接続(芯線が露出しないよう注意)
  4. 室内機本体を裏返し、必要な分だけ電源コードを引き出す。余分なコードは裏側のくぼみに収め、ビニールテープで仮固定
  5. 配管パイプ(冷媒銅管)のフレアナットを外し、配管をまっすぐに引き出して電線・ドレンホースとともにまとめてテープで仮固定
  6. まとめた配管・電線・ドレンホースを配管穴から屋外側に通しておく

5. 室内機を据付板に取り付ける

  1. 室内機本体の丈夫な部分をしっかり持ち上げる
  2. 据付板上部のフック(爪)に引っ掛けるように設置し、下部の爪を左右とも「カチッ」と音がするまで押し込む
  3. 電源コードやアース線の長さを確認し、余裕を持って接続できるかチェック
  4. フロントパネルを元に戻し、室内機が水平に設置されているか最終確認

6. 室外側の配管をフレア加工する

フレア加工の目的

配管先端をラッパ状に広げることで、接続面とすき間なく密着させ、ガス漏れや水滴の侵入を防ぎます。

手順

  1. 室外機側へつながる冷媒用銅管を、現場に合わせた長さにカット
  2. リーマーやヤスリで切断面のバリを丁寧に取り除く
  3. フレアツールを配管先端にセットし、ゆっくりと回してラッパ状に広げる
  4. 加工したフレア面を室内機側のフレア面と合わせ、フレアナットをはめてスパナやレンチでしっかり締める

※雑なフレア加工は運転効率の低下やガス漏れの原因となるため、ゴミや水分が入らないよう、慎重に行ってください。

7. 室外側の配管を整える

  1. 室内から壁を通してきた配管を外壁に沿わせながら曲げて、見栄え良くまとめる
  2. 配管とVVFケーブルをテープでまとめて一本に束ねる
  3. 壁の配管穴まわりはエアコン用パテやコーキング材でしっかり埋める
  4. 仕上げに化粧カバーを取り付けると、より美しく配管を隠せる

8. 室外機を設置し、配管をつなぐ

  1. 室外機を水平なプラブロックや専用台に置き、ビスで固定する
  2. 室外機のサービスポート(ガス取入口)に、室内側でフレア加工した配管を接続
  3. 太い方のバルブがガスの受け口、細い方が送り口なので間違えないように注意
  4. フレアナットが緩まないよう、トルクレンチなどで規定トルクまで締め付ける
  5. バルブキャップをきちんと取り付ける(緩んでいるとガス漏れの原因になる)

9. ドレンホースとVVFケーブルをつなぐ

  1. 室外機の保護カバーを外し、室内機同様に3線あるVVFケーブルを色ごとに接続
  2. ドレンホースは室外機側から引き出し、地面や排水口がある場所へ水が流れ落ちるように設置する
  3. 接続部分にテープを巻いて水漏れやほこりが入らないように保護

10. 真空引きを行う

目的

配管内の空気や水分を完全に取り除き、冷媒ガスと混ざらない真空状態をつくることで、冷暖房運転時の効率を高める。

手順

  1. サービスポートのナットキャップを外す
  2. 真空ポンプ→真空ゲージ→ホース→コントロールバルブの順で接続
  3. コントロールバルブを閉めた状態でシステム内を真空状態にし、真空ゲージの圧力が0(MPa)を示しているか確認
  4. コントロールバルブを全開にして、10~15分ほど真空ポンプを稼働
  5. 真空ゲージが −0.1MPa前後を指していれば真空引き完了
  6. バルブを閉じ、10分ほど放置してもゲージ圧が変化しなければ気密性に問題なし
  7. 圧力が戻る場合は接合部のどこかで空気漏れしている可能性があるため、石鹸水を塗って泡立ちを確認し、漏れている箇所を特定

※真空引きに失敗すると冷房効率が大きく低下し、水分が結露して内部機器を痛める恐れがあります。

11. 冷媒ガスの封入(開放)作業

  1. 室外機のサービスポートキャップを外し、六角棒レンチで「細管→太管」の順にバルブを緩めて冷媒ガスを配管内部に流し込む
  2. 十分なガス量が封入されたら、バルブを閉めてキャップを戻す
  3. 万が一ガス漏れが発生したときは、すぐにバルブを締めて漏れている箇所を再チェック

12. 試運転と最終チェック

  1. エアコンを運転モード(冷房)で一番低い温度に設定し、数分間動作を確認
  2. 以下のポイントをすべて確認する:
    ・室内機の吹き出し口からしっかり風が出ているか
    ・室外機のファンが正常に回っているか
    ・室内機の熱交換器が冷たくなっているか
    ・ドレンホースから水が適切に排水されているか(室内機に水を流して確認)
    ・室内機から水滴が垂れていないか

問題がなければ、これでエアコンの取り付け作業は完了です。

自分で取り付ける際の注意点

電気工事士の資格が必要な作業がある

・単相100V⇔単相200Vの切り替えや専用コンセントの新設、アース線を接地極へつなぐ工事などは、電気工事士しか行えません。
・隠蔽配管や大型業務用エアコン(600V超)など、特に高電圧・大容量の工事は資格なしで行うと事故につながります。

失敗したときの補償がない

業者に依頼すれば瑕疵があった場合の補償やアフターサービスが受けられますが、DIYだとすべて自己責任です。取り付けミスで住宅が傷ついたり、エアコン本体が故障したりした際の修理費は全額自分持ちになります。
将来的にエアコン取り付け業で独立を目指す方は、「請負業者賠償保険」や「PL保険(生産物賠償責任保険)」などに加入しておくことを強くおすすめします。

ガス漏れのリスク

真空引きが不十分だったり、配管接続が緩かったりすると冷媒ガスが漏れます。
万が一漏れた場合はプロに冷媒ガスを充填してもらう必要があり、数万円単位の費用が発生します。

エアコン取り付けにかかる費用

  • 初期投資として工具や部材をすべて揃えると、20,000円~25,000円前後はかかります。工具や部材は複数台に使い回せるため、2台以上の設置があるとDIYのほうがコストを抑えられるケースがあります。
  • DIYで取り付ける場合は「保証が効かない」「ミスしたら自己責任で修繕費が高額になる」というリスクを忘れないようにしましょう。

結論として、たとえ自分で取り付ける技術を身につけても、初めて1台だけ設置するなら業者に依頼したほうが安心かつ経済的な場合が多いです。ただし、複数台を設置する予定がある、将来的に仕事として独立したい、工具を既にそろえている、というようなケースではDIYも検討できるでしょう。

以上が、エアコンを自分で取り付けるときのポイントです。まずは「自分の環境で本当にDIY可能か」を見極め、必要な道具や部材を準備し、手順や注意点をしっかり理解したうえで取り組んでください。